現役学生による研究室紹介
はじめに
これは数理解析分野の現役学生が書いているページです.
どの研究室に入ろうかと考えている皆さんにとって,研究内容が第一としても,やはり入ったあとに実際どんな生活が待っているのか,という点は気になるところでしょう.しかし,なかなか外からでは実態はわかりにくいのではないかと思います.そこで,このページでは研究室での活動の様子を中心に,所属学生の目線から研究室紹介をしたいと思います.主に大学院修士課程志望者向けの情報を中心にしていますが,情報学科の学部生向けの情報もあります.ぜひ研究室選びの参考にしてみて下さい.
まずは写真で活動の様子を見てみたいと思います.早く詳しい説明を読みたい方は目次へお進み下さい.
- コロキウムの様子.各自の最近の研究内容を説明します.
- 前期のM1・B4ゼミの様子.これは可積分系の本を読んでいるところです.
- 2015年の夏の研究会での集合写真.この年は京都府相楽郡で開催されました.
目次
- メンバー構成
- 入学するには?
- 入学後の勉学に必要な予備知識
- 普段の研究活動について
- 年間スケジュール
- 研究室環境
- 過去の入学者のデータ
- 就職についてのデータ
- よくある質問とその回答
- 研究室訪問 − もっと詳しく知りたい方へ
メンバー構成
情報学研究科の教職員・大学院生と,工学部情報学科数理工学コースの卒研生から構成されています.2024年度は以下の通り:
- 教職員: 辻本教授, 小林助教, 横関事務補佐員
- ポスドク研究員1名
- 博士後期課程院生1名
- 修士課程院生8名
- 学部4回生4名
- 計17名
修士課程院生は,学部卒研生がそのまま進学するケースが多いですが,他大学・他学部出身の入学者もたくさんいます.
入学するには?
数理解析分野は 京都大学 大学院情報学研究科 数理工学コース の所属です.数理工学コース修士課程に入学するためには,例年8月に行われる入学試験を受ける必要があります.2月にも留学生特別枠入試がある他,年度によっては2次募集入試が行われます.詳細は募集要項及び専攻の入学試験についてのページをご覧下さい.当研究室の研究内容に興味を持たれた方は,是非チャレンジしてみて下さい.なお,5月,6月に行われている大学院数理工学コース説明会に来ていただくか,直接連絡をいただければ,研究室の見学も可能です.その際に学生部屋にお越しいただければ,研究室での生活や大学院入試の体験談についてお話しすることもできますので,是非お立ち寄り下さい.
修士課程ではなく博士後期課程への入学を希望される方は,教員と直接ご相談下さい.
入学後の勉学に必要な予備知識
大学院ですので入学後は自分の研究テーマに取り組むことになります.しかし,入学にあたっては可積分系理論や数値解析に関する特別な予備知識は必要ありません(もちろん,これらの知識を持つ人は大歓迎です).こういった研究に必要な知識は,研究室でのゼミや専攻開設の授業,または具体的な研究課題に取り組むことによって自然に身についていくものだと思います.ただし,当然ですが線型代数や微分積分といった理工系大学学部で学ぶ数学の最低限の知識は要求されますので,しっかり復習しておいて下さい.
情報学研究科の修士課程を修了するためには,普段の研究及びその成果のまとめである修士論文の執筆に加えて,大学院で開設されている授業を受講し,単位を取得する必要があります(研究指導科目を除くと20単位,半期の講義10コマ分必要).数理工学専攻の場合,専攻で開設されている数学や物理,オペレーションズ・リサーチ,制御理論に関する科目を中心として,場合によっては他専攻で開設されている科目からも選択して単位をとります.入学後にこうした授業についていけるか不安な方もいらっしゃるかもしれませんが,多くの授業は外部からの入学者に配慮した内容となっていますし,わからないことがあれば周りの院生も助けてくれますので,心配はいらないと思います.
普段の研究活動について
数理解析分野では,主に以下のグループに分かれて研究活動を行っています:
- 可積分系(連続・離散・箱玉): 離散可積分系の基礎理論,及びその応用.基礎から応用まで,扱う範囲は広いです.離散可積分系に基づく計算アルゴリズムへの応用も研究しています.最近では,数理モデルの解析手法の開発など共同研究プロジェクトも立ち上げています.
- 特殊関数・直交多項式: 離散可積分系と密接な関係を有する特殊関数・直交多項式の理論と応用について研究を行います.
- 組合せ論: 離散可積分系ヘの組み合わせ論からのアプローチ.グラフで離散可積分系の解を構成したりと,他ではお目にかかれないユニークな研究をしています.
なお,グループが同じでも1人1人の研究テーマは異なります.グループとしての活動は,各自の研究の進展具合を定期的に報告し合い議論を深めることが中心です.どのテーマを選ぶにしても,コロキウムで各グループの研究を中心とした様々な話が聞けますので,数学の応用について興味がある人には特におすすめの研究室です.
- 学生制作の研究紹介ポスター: 制作者本人(辻本グループ)の研究テーマに偏った内容ですが,参考までに.
次に研究テーマの決定について.自分で取り組みたいテーマがある場合はそれに越したことはありませんが,通常は最初の半年のゼミとコロキウム,夏の研究会を経て,9月頃に自分がやりたい研究の大まかな方向性 (上の3つの研究分野のどれか) を教員に伝えることになります.その後,各グループでの打ち合わせを経て具体的な研究テーマを決定,研究を始めることになります.
年間スケジュール
以下はあくまでも標準的な場合です.年度によって細部が異なることがあるのに加え,当然のことながら個人によって研究活動の進め方が変わってきます.
修士課程院生の場合
研究室内の行事
- コロキウム: 前後期,毎週1回.内容は各自の研究進捗の報告,研究紹介,もしくはゲストの講演会となります.内容にもよりますが,1回あたり90分〜180分程度です.修士課程院生が発表するのは図の赤色のいずれかの時期に1回です.最後の発表となる2回生の11月までには修士論文の内容を大体固めておくことが目標になります.
- M1・B4ゼミ: 前期,週1回.内容は可積分系,直交多項式などの分野から一つ本を選び, それを輪読します.このゼミで以降の研究に向けた基礎体力を付けます.なお,研究室行事として行なっているゼミは,コロキウムの他はこれのみですが,各自の興味に合わせた自主的なセミナーを開いたり,研究グループ毎のセミナーを開いたりと,意欲があればそれに応じてどんどん学んでいける体制となっています.
- 夏の研究会: 8月末から9月頭にかけて,学外で開催される研究会に研究室の教員・学生は参加します(2泊ほど).研究会では学内外の教員・研究者の講演,博士課程・修士2回生の学生の講演の他,修士1回生も初めての対外発表に挑戦します.修士1回生の場合,ここでの発表は論文のサーベイ(+アルファ)程度で構わないとされています.プロの研究者との研究交流の場にもなっています.この研究会発表を契機として修士1回生は研究テーマを決めていくことになります
- 歓迎会,前期打ち上げ,忘年会,追い出しコンパ: 節目毎にコンパを開いて親睦を深めています.これらコンパの幹事は,主に修士1回生が担当します.なお,当然ですが飲めない人に強要することは絶対にないので,安心して下さい.毎年必ず行っているのは上記4つですが,この他にも何かイベントがあれば臨時で開かれる場合があります.
その他
- 前期授業,後期授業: 大学院でも授業があります.1回生の前後期で必要単位は全て取得してしまう人が多いようです.1回生で単位が揃えば,2回生は研究に専念できます.
- TA (Teaching Assistant): 大学院生には,研究室の教員が担当している学部 (情報学科) の授業 TA の仕事が割り当てられる場合があります (給料あり).2012年度の場合,線形代数学A・B,工業数学A3 (Fourier 解析),応用代数学 (群論),数値計算演習,基礎数理演習 (線型代数学,微分積分学,力学の問題演習)が該当します.講義 TA の仕事はレポート問題作成・添削,演習 TA の仕事は学生の質問に答えることです.
- 修士論文: 例年通りだと2月第2週の金曜日が締切で,その次の週の水曜日が発表会です.修士論文は英語か日本語で書きますが,英語で書く人が多いようです.発表会では,専攻教員全員の前でプロジェクターを用いて10分間発表した後,5分間の質疑応答を行います.これに合格してかつ必要単位が揃っていれば修了となります.
- 学会・研究集会等: 9月,3月には学会の年会等が集中しています.当研究室が関係するのは,主に日本応用数理学会と日本数学会です.学会の年会以外にも関係の国際会議などでの研究成果発表機会があります.ある程度まとまった成果が出れば,学術雑誌への論文投稿も視野に入ってきます.よい成果が出ればどんどん発表したいものです (就職の際の自己アピールネタにもなりますし).
- 就職に向けた活動: 研究室の活動の合間を縫って,各自就職に向けて企業説明会への参加やインターンシップ参加などで動きます.情報学研究科の OB・OG がリクルータとして毎年大学にやってきて詳しく説明を受けられますし,研究室の先輩の体験談も参考になると思いますので,積極的に相談してみるといいでしょう.
学部生の場合
研究室内の行事
- コロキウム: 前後期,毎週1回.内容は各自の研究進捗の報告,研究紹介,もしくはゲストの講演会となります.内容にもよりますが,1回あたり90分〜180分程度です.学部生が発表するのは12月の1回 (図の赤色の時期) で,卒論に向けた研究の進捗状況を報告することになります.
- M1・B4ゼミ: 前期,週2回.内容はそれぞれ可積分系,数値解析の本の輪読です.このゼミで後期からの研究に向けた基礎体力を付けます.なお,研究室行事として行なっているゼミは,コロキウムの他はこれのみですが,各自の興味に合わせて自主的なセミナーを開いたり,研究グループ毎のセミナーを開いたりと,意欲があればそれに応じてどんどん学んでいける体制となっています.
- 夏の研究会: 8月末から9月頭にかけて,学外で開催される研究会に研究室の教員・学生は参加します(2泊ほど).研究会では学内外の教員・研究者の講演,博士課程,修士課程の学生の講演を聴講します.研究者との幅広い研究交流の場にもなっています.この研究会参加を契機として,教員のアドバイスをもとに,後期からの研究テーマを決めていくことになります.
- 歓迎会,前期打ち上げ,忘年会,追い出しコンパ: 節目毎にコンパを開いて親睦を深めています.なお,当然ですが飲めない人に強要することは絶対にないので,安心して下さい.毎年必ず行っているのは上記4つですが,この他にも何かイベントがあれば臨時で開かれる場合があります.
その他
- 前期授業: 必要単位が足りない人はこれで揃えましょう.進学する人は大学院入試と前期試験が重なるので結構大変です.
- 後期授業: 後期の試験は卒論締切・発表に重なるので,後期まで不足単位がある状態はなるべく避けた方がいいと思います.たとえ卒論に合格しても,単位が足りなければ当然卒業できません.
- 大学院入試: 進学する場合は,8月上旬の院試に向けて勉強する必要があります.他大学院の入試も大体この時期 (7月〜9月) に集中しています.2次募集が2月にある場合もあります.
- 卒業論文: 例年通りだと1月の最終日 (最終日が休日の場合はその直前の平日) が締切で,その数日後にはすぐに発表会です.卒業論文は日本語で,LaTeX を用いて書きます.3回生までの演習科目のレポートなどである程度体裁の整った文章を LaTeX で書く練習をしておくと,ここで生きてくるはずです.大体書き始めるのは12月のコロキウムでの発表直後か,遅くとも1月頭です.発表会では,コース教員全員の前でプロジェクターを用いて5分間発表した後,質疑応答を3分間行います.これに合格してかつ必要単位が揃っていれば卒業となります.発表時間がとても短いので話をまとめるのが大変で,直前には何度も練習を繰り返すことになります.
- 学会発表: 9月,3月には学会の年会等が集中しています.本研究室が関係するのは,主に日本応用数理学会と日本数学会です.卒論で成果を出せれば,春の学会で発表できるかもしれませんので,目標の1つとして頑張ってみて下さい.
研究室環境
部屋について
研究室は,吉田キャンパス工学部1号館の3階にあります.工学部1号館は2014年に耐震改修工事が竣工した建物です.学生部屋では,1人1人に専用の机が与えられ,自由に使うことができます.共用のものは以下の通りです:
- レーザープリンタ
- カラーコピー機
- ホワイトボード
- ソファとテーブル
- シュレッダー
- 冷蔵庫
- 電子レンジ
- 湯沸しポット
- 本棚
- 空気清浄機
研究資源について
研究室の書庫には数学・数値解析の幅広い分野に渡る和書・洋書が揃っており,必要があれば研究室で購入することもできます.数値実験用の最新の CPU を積んだマシンや,GPU を積んだマシンなどがあります (最近はマルチコア・メニーコアを生かす研究がトレンドらしいです).ソフトウェアは,研究科のライセンスで色々なソフトウェアが使えますが,特に数学を研究している人がよく使うのは数式処理システムの Maple です.このように,研究を遂行するにあたって十分な環境が整っていると言えると思います.
教員・学生について
研究室に所属する一番の意義は,やはり志を同じくする人々との出会いにあると思います.以下はこれを書いている人の個人的な感想になりますが,参考になればと思います.
教員は各々がその分野における第一線の現役研究者であり,それぞれが個性的な方で,議論をすればその豊富な知識に裏打ちされた的確な指摘が次々に飛び出します.ただし,求めなければ基本的に何もしてくれませんので,自分から能動的に動く必要があります.研究指導を求めて積極的に会いに行きましょう.
学生も教員に負けず劣らず個性的な人々が集まっており,刺激を受けることは間違いありません.皆さん温和ですが研究熱心で,研究室の人間関係は非常に良好だと思います (少なくとも私は険悪な雰囲気を感じたことは一切ありません).コロキウムやセミナーでは質問・意見が次々に飛び出しますし,コンパは節度を保ちつつも盛り上がります.
以上で研究室の紹介は終わりで,この下はデータ・質疑応答となっています.皆さんもこんな研究室の一員に加わってみませんか?
過去の入学者のデータ
本研究室では,ほぼ毎年他大学・他学部出身の修士課程入学者を受け入れています.具体的には,以下のようになっています.
入学年 | 2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
入学者数 | 6 | 3 | 2 | 5 | 3 | 5 | 3 | 4 | 3 | 3 | 4 | 5 |
うち他大学・他学部 からの入学者数 | 2 | 1 | 0 | 1 | 1 | 3 | 0 | 3 | 1 | 0 | 1 | 2 |
- 出身大学: 京都府立大学生命環境学部(4名),大阪府立大学(2名),大阪大学基礎工学部,金沢大学理学部,慶應義塾大学理工学部,東京大学工学部,名古屋大学工学部,立命館大学理工学部,和歌山大学教育学部,早稲田大学理工学部,京都工芸繊維大学,西北工業大学.
- 京都大学出身者の卒業学部: 理学部数理科学系 (4名),工学部地球工学科,総合人間学部自然科学系.
具体的な個々人の事例については,専攻ページの在校生の声 (数理解析分野) が参考になると思います.
就職についてのデータ
当研究室は,区分としては数学系の研究室となりますが,就職の学校推薦に関しては専攻,もしくは研究科単位で行われるので,研究室による有利・不利はありません.自由応募の場合は個人の力によります.以下では参考情報として,(他大学・他学部出身者に限らない) 研究室修了者の就職状況についてのデータを示します.
(注意)これらはあくまでも修了直後の就職先のデータであることに注意して下さい.把握している範囲だけでも転職している人が何名かいます.
- 就職先 (2012年度までの修士課程修了者): 富士通(2名),NTTデータ(2名),新日鉄ソリューションズ (2名),東芝 (2名),日本IBM (2名),ローム (2名),住友電気工業 (2名), 住友電工情報システム,中部精機,エスエムジー,近畿日本鉄道,KDDI,ソニー,大和証券SMBC,東京海上日動あんしん生命保険,トヨタ自動車,日本生命保険,バークレイズキャピタル証券,パナソニック,ピクセラ,日立製作所,三菱総合研究所,メガチップス,など.
また,博士後期課程へ進学する人も一定数います.
専攻全体の就職先の情報も併せてどうぞ.
よくある質問とその回答
研究室見学で出た質問とその回答を中心に,掲載できる範囲で書きます.随時追加予定.
- Q: 現在アルバイトをしているのですが,研究室配属後も続けることはできますか? 拘束時間はどれぐらいありますか?
- A: 研究室での拘束時間は,毎週のコロキウムと前期のゼミ,各研究グループのミーティング (多くて週1回程度) だけですので,十分可能かと思います.実際にアルバイトをしている人もいるようです.普段の研究に差し障りのない範囲でどうぞ.
- Q: 学部生で,まだ取り残した単位がたくさんあるのですが,授業の時間とかぶって研究室のゼミに出られない,というようなことはありませんか?
- A: ゼミの予定は,参加者の都合に合わせて設定しますので,あまり心配しなくても大丈夫です.
研究室訪問 − もっと詳しく知りたい方へ
何事も百聞は一見に如かず.というわけで,大学院入学希望の方,研究室配属予定の学部生など,当研究室は皆様の訪問を歓迎します.訪問を有意義なものとするために,事前に電子メール等で教員に連絡をとることを強く推奨します (メンバーページを参照).ご来訪の際は,アクセス情報をご利用下さい.